天台五門跡のひとつ山科毘沙門堂は、格式の高い寺院で、参勤交代の西国大名も素通りせず、挨拶に立ち寄ったと言われています。
【毘沙門堂】
ここには、立派な襖絵のある部屋がいくつもありますが、梅や竹が描かれているのに鶯や雀が描かれておらず、ひよどりやしまひよどりが描かれている襖絵のある部屋があります。
訪ねていって、この部屋に通されれば、いくら待っても誰も会いに来てくれません。
それは、梅に鶯、竹に雀というように取り合わせというものは決まっているものですが、この部屋では合わない状態になっています。
つまり、「会わない」部屋です。
直接、都合が悪いから帰って下さいと言えば、相手を傷つけるのでこんな部屋を用意したわけです。
この部屋に通された人は、絵の意図に気付き、自分の方から 「急用を思い出しましたので、また後日参ります。」と、引き下がります。
はっきりものを言わない京都のおつきあいのひとつです。